博物館ガイドシステム ubiNEXT まとめ

●概要
ミュージアムガイドシステム、「ミュージアムメディア」の前身は、ATRメディア情報科学研究所で研究開発されていたubiNEXT(ユビネクスト・ゆびネクスト)というミュージアム ガイドシステムです。研究期間が終了し、事業部門で成果を引き継ぎました。研究期間終了と同時に、Webページも散逸していたのですが、こちらでこれまでのプレス発表や記事、論文関係をまとめておきます。




■ubiNEXT 2005年〜2006年頃に開発
まだWebサイトでも「タグ」があまり普及していない2005年頃、ubiNEXTは「タグ」や「推薦」機能を搭載したガイドシステムとしてデザインされました。ビジターは、タグで関連づけられた展示物を推薦され、興味のあるものをタグの視点で解説されます。
従来の「順路」や、はじまりとおわりのストーリーが前提の博物館にとっては、自分の興味に従って、自由に博物館の中を順路関係なく巡れるガイドシステムは、「ナニ?音声ガイドと全然違う・・・」と思われていました。

Web的な「タグ」や「推薦」を使った新しいガイドシステムの実験に協力してくれたのが、京都大学総合博物館、オランダVan Abbe Museumでした。(機会を与えてもらえたことに、とても感謝しています。)


■ubiNEXTはFree Choice Learningに基づいたデザイン
ubiNEXTは、Web志向ですが、それだけではなく、博物館学で重要とされる"Free Choice Learning"(自由選択学習と自訳してます)を背景にしています。Free Choice Learningでは、ビジターの日常生活の中で興味を持っている事柄、たとえば本屋で買ったあの本、前の資料館で興味を持ったあの展示物、テレビを見ていて気になったアイテム、など、すべてのファクターが、博物館体験を高めるのに大切なことなのです。また、個人的な体験、ソーシャルな体験、事前の予期、追体験、なども重要です。

日常的に気になっているアレコレに基づいて、博物館の展示物の解説内容が変わったら面白い。さらに、展示物を巡る順路も変わる体験ができれば、日常と博物館体験を結ぶことができるのでは?という考えを実現するための、「タグ」や「推薦」機能だったのです。


■ubiNEXTの実証実験
自分の興味のあるタグで展示物を見ると、そのタグの切り口でクイズを体験できるガイドシステムを、京大博物館とVanAbbeで実験したubiNEXTで実現しました。京大博物館では、我々主体の実験だったため、タグの大半は自分たちで作ることになり、学芸員の資格をもつ同僚と四苦八苦タグをつけました。正直コンテンツは、それほど面白くなかったと思います。しかし、来館者は京大生や京大関係者がほとんどでしたので、リピータが現れるほどシステムそのものを面白がって使って貰えました。Van Abbeでは、学芸員がタグづけをしてくれて、ロシアアバンギャルド芸術を、当時の政治思想などの切り口で回ることができ、かなり面白いコンテンツになっていました。実験に参加してくれたのは、子供から年配者でしたが、アートそのものに関心のたかい年配の方からの評価が良かったです。
京大では現地で協力をお願いした百数十人、オランダでは授業の一環として使ってもらうなどして、かなりのデータをとることができました。


■その後のミュージアムメディア 2007年〜
ubiNEXTは今は終了していますが、精神とサービスは現在のミュージアムメディアhttp://www.atr-p.com/mm/project_j.htmlに引き継がれています。



オランダのテレビニュースで紹介されたubiNEXT


京都大学総合博物館のubiNEXT