ミュージアムガイドとゲームデザイン

ミュージアムや観光地でよく耳にする「ルート案内」
一番効率の良いルートを案内する、
一番空いているルートを案内する、
これは、提供者側からは、おそらく便利だと思われるので
提供したいサービスです。
でも実際のビジターは横道にそれたり、自由にくつろいで休憩して
あまり提案した通りのルートをまじめに回るということはしません。
むしろ、提案されると腹が立つ、といった意見さえ聞くことがあります。
機械にあーだこーだ指図されるのがイヤな人は多いです。

こういったルートを、「ルール」として押しつけるのではなく
ゲームに置き換えることによって、もっと先を見たいとか
どんどん攻略していきたいといったモチベーションを持ってもらい
結果的に、効率よく空いているところを回れたね、
ということになれば良いのかもしれません。


博物館ガイドシステムをデザインするにあたり
博物館の持つコンテンツを見てもらう、理解してもらうといった
知識を提供するツールだけではなく、
ゲーム的な要素を取り入れるのは効果的なようです。
たとえばクイズを提供した場合はポイントがついたり
全部クリアすればスペシャル画面を見ることができたり、
そういった直接的に知識に結びつかなくても
展示物をよく観察する、といった行動に結びつくような
行動を促すことを意識します。


ミュージアムインタラクティブについてゲームからのアプローチ
Museum 2.0のブログ投稿Think Like a Game Designer
では、ミュージアムインタラクションデザイナーさんが
ゲーム開発のワークショップに参加して気付いたことを投稿しています。

  1. 抽象化することで、人と人をつなぐインタラクションのプロトタイプを、簡単に、素早くつくることができる
  2. ビジター(来館者)にも攻略法あり
  3. 組織の価値に従って、「上手に遊べる」ことを推進するような、インタラクションをデザインすることができる。

博物館側で考えていた画一的なゲームの攻略法は、
ゲームとしてはあまり面白いものではない、
なぜならビジターは、ゲームとなると多種多様な攻略法を持っているから。
展示場内では、あらかじめ用意した、ゴールまでの「正しい」道のりをデザインするのではなく
個々人の攻略法を持ち込めるようなルールセットやプラットフォームを
準備する方がゲームとしては面白いということに気付いた、ということです。

We rarely talk about this when we design museum exhibits. We expect that visitors will intuit our intended strategy and play accordingly. This doesn't make sense. Games are more interesting when there is more than one viable strategy; that's why we graduate from Candyland to chess. Rather than designing a prescribed "correct" path through an interactive exhibit, we should be thinking more about the rule sets or platforms we can design that will invite visitors to successfully bring personal strategies and modes of interaction to the experience.

画一的なルールで見せているクイズ等のゲームもどきですが、
プラットフォームを考えるということが、まずデザインの最初
なのかもしれません。
こういった体験を生み出すためには、プロトタイプが必要ですが
ガイドシステムのほうは、実際のところ開発期間が短かったり
充分なプロトタイピングができないまま、会期スタートという
こともあります。単純なゲーム(紙とかも可)でかなり抽象的な
プロトタイプをつくって、コンテンツの見方やゲームの楽しさの
両方を構築できると良いですね。


民博で行った「みんぱくナビ」は、ルートを設定せずにタグで回るという
ユーザまかせのガイドを提供しましたが、
ルート通りにきっちり回る人と、全く自由にタグで回る人で
かなり多様な使い方が見られました。
みんぱくナビ」についてはこちら>>>>
効率は関係なく、自由にタグで回る事自体が
新しい体験となっていたということだと思います。